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「砂星」は、Nifty serveの現代詩のフォーラム１番会議室と新・詩のフォーラム５番会議室に、1999年1月〜4月に掲載した連詩を、一部加筆・修正したものです。 |
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●●● 白い月 ●●● ドアのノブに手をのばした刹那 「ただいま」 息をひそめて 父はよく あたしのいないところで あるいは 「ママン、おみあげ！」 いつの間に眠っていたのか 「ありがとう」 父が 心配そうにあたしを見ている 「長くなってごめんね」 成美を抱き寄せて 「あのね、 成美が真剣な表情になる ありがとう |
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●●● 太陽 ●●● 一体 いつから あたしは たったひとつだけ 「ママン、 さっきまで 「どの太陽のお話？」 成美は まだ判っていない 抜け殻にすぎないのだから 「ずっと昔のことです。 父は なにを想い 「あはは、かんたんじゃない、 成美が 得意げに笑う ツキくんは |
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●●● 春空 ●●● 好きな季節を訊かれて 空に流れるすじ雲を 「ねえ、成美。 砂場で砂いじりをしながら 誰かが忘れたスコップが 「ツキくん、お花買ってたの？」 成美は 顔を上げて 「おはな、 キッチンのテーブルのうえ 「ツキくん、ないてたの。 ことん と それはきっと 「ママン、 成美が指さした先 あたしは独り 成美なら |
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●●● 雲の源 ●●● 人生の見本市みたい 成美は しゃがみこんで 「おはな、どうしてかれちぁうの」 振り返った成美の背後で開いたガラス扉 「いつから、ここで？」 有美ちゃんは 静かに歩いて 「どうしたのマユコちゃん、 有美ちゃんが まぶしそうに空を見あげる 備え付けのベンチに ２人並んですわる 時の流れは 「ツキくん、今日は休みなの。 あたしは やっとのことで首をよこに振る 「あーあ、またこの娘ってば、 店から出てきたきりこさんが 「また今度、ツキくんに逢いに来るね」 バイバイ と云った成美の手は |
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●●● 雨だれ ●●● あたし 小さな頃はどんな子だったの？ 店の軒先から 雨だれの音が聞こえる 「あたし、やっぱり書き直します」 原稿を取り返して 「ここ何年かの原稿はみんな、 ＢＧＭの軽い音色をかき消して 「自分がどんな子だったか、 雨ばかりの森の一軒家に独りで暮らす少女に 『少女は、郵便屋さんがあーでもない、こうでもないと、 「ツキくんが帰ってきたんだって？」 そんな言葉に驚いて 郵便屋さんは 書き終えた手紙を 『その手紙を読んで、 ここは 少女が独りで暮らす森だろうか |
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●●● 砂星 ●●● クリーム色の空気が 部屋を横切っていく 「成美ちゃん、ひと目で判っちゃうね、 白いソファに体重をあずけて こんな風に 「ねえ、マユコちゃん。 郵便屋さんが届けてくれた 数え切れない手紙を 「あたしが生きてこられたのはね、 黒猫が ベランダの手すりに飛び移る 「ツキくんの心を、見つけてあげて」 有美ちゃんが 涙ぐむ 空じゅうに広がった星々を拾い集めて 「かんたんじぁない、 ぱちんと 空気がはじけて 成美の瞳のなかに あたしがいる 郵便屋さんが ドアを叩く音 ツキくん ベランダから 今でも 月は |
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●●● 回帰 ●●● ぐるりと ひと回りして 成美が 布団からはみだして眠っている 成美が寝返りをうち 苦笑する こんな夜おそくでも 飛行機が飛んでいる 月が白い光を降りそそぐ丘に ブラウザーを立ち上げて 大丈夫 成美に布団をかけ直す 彼女がママンでないように だから 大丈夫 部屋のなかを 身軽に駆け回ったあと |