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「彼とあたしとカノン」は、Nifty serveの現代詩のフォーラム１番会議室と新・詩のフォーラム５番会議室に、1999年10月〜2000年1月に掲載した連詩を、一部加筆・修正したものです。 こうしてタイトルを並べてみると、なんだか、ばれてしまいますね、幸いNifty serveへの掲載時に指摘はありませんでしたが。 |
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●●● 信じる ●●● 「おかえりなさい」 玄関で靴を脱ぎそろえて 部屋の真ん中 カノン そう 椅子から降り立ち 「今日ね、 彼は テーブルの上の封筒を開けて 死んでしまう 「早く早く」 彼が あたしを見る 「足りないわ」 もう少しのところで 「いろんな想いをつなぎ合わせる気持ち。 彼は 心の塊を粉々に砕いて 「信じていたよ、 帰る場所を与えてくれたのは |
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●●● 顔 ●●● 朝 起きると にゃあ と鳴き声がして 「ぼくだって、 ちがう 貼り付いている 彼の足元をすり抜けて 「ねえ、 彼とカノンは 振り返ると 「朝が来るたび、 いつの間にか 「きみだけじゃないよ」 彼は あたしの顔に触れて 「さあ、 彼は少年のように笑って 指で撫でると |
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●●● 聞こえる ●●● テーブルの真ん中に座って 「静かに」 鋭い 彼の声 「ここか」 彼は テーブルの位置を定めて 「カノンだって、 それにしても 「お茶なら、 彼は 目を丸くして 「ラジオの原理だよ」 あたしの疑問を先回りして 「誰と話がしたい？」 あたしは 胸のおく あたしは 判らない ノイズが聞こえる あたしは 「意地悪ねえ」 闇の中に 「耳を澄ませば、 「肝心なのは」 目は ゆっくりと膨張して あたしは 「呑まれないこと」 目が 破裂して 「おかえり」 テーブルから降り立つ 「立って飲もうか」 テーブルの上 彼のことが |
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●●● プリズム ●●● テーブルのカップの中で 窓辺に寝そべった黒猫のカノンの 「分散して初めて、 彼は 軽々と 分散した要素が 何だろう 「今、 彼が 声をたてて笑う 「誰かが『世界』という光の前に、 彼が投げ出した三角形が にゃあと 「大切なのは、 もとの光にいても つまらない仕組みだね と 「世の中が、 なんだろう 「外れたか」 ちぇっ と舌を鳴らして 「まあ、 美味しそうにお茶を飲む カップの中で |
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●●● 元気ですか ●●● 彼と黒猫のカノンが 「ねえ」 強い既視感 そうじゃない 「判らないことを言葉にしては、 カノンが 鼻をひくつかせる 「それが知りたいんだろう」 彼が差し出した手紙 「あたし、 本当に出さなかっただろうかか 元気ですか と 「これから出すんだ」 彼が差し出したペンは あたしの手を取り 消えてしまった便箋の文字を 「これでもう、 窓の向こうに手を振る彼の 「きっとまた、 彼の視線を受けとめる 「あたしも元気です」 手紙を読み上げる彼の 彼は 窓辺に佇んで |
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●●● 白い歌 ●●● 果物がいいね と笑って 時折 カノンのことが 「ゆっくりでいいよ」 彼は テーブルに皿を並べて 壊れた玩具を諦めるように きっと あたしは 「いいね」 テーブルの真上 作られた 生命観 ナイフの刃に刻まれて あたしも 彼が 無邪気に あたしは 「もう少し続けて」 テーブルの真上 「もう少しだったね」 彼が いつの間にか傍にいて 「ぼくの仕業だと思った？」 大丈夫 「一緒に食べよう」 彼は 手際よく果実を切り分け 「なにが欠けているの」 そう訊いて初めて 「なんだと思う？」 従順さ と答えることを躊躇って ガラスのコップで |